高齢者雇用関連助成金の活用
高齢者雇用に関連する助成金や支援制度について、包括的かつ実践的な情報を提供することを目的としています。
70歳までの就業機会確保が努力義務化される中、高齢者雇用を推進するための財政的支援を効果的に活用する方法を解説します。
高齢者雇用における助成金活用の重要性高齢者雇用を推進することは、企業にとって以下のようなメリットがあります
- 豊富な経験と専門知識を持つ人材の確保
- 技能伝承の促進
- 人手不足への対応
- 多様な視点による問題解決力の向上
一方で、高齢者雇用に伴う課題もあります:
- 人件費の増加
- 職場環境の整備コスト
- 健康管理・安全対策の強化
これらの課題に対応しながら高齢者雇用を推進するには、一定のコストがかかります。助成金を活用することで、そのコストを軽減し、より積極的に高齢者雇用に取り組むことができます。
高齢者雇用関連助成金の概要
1. 主な助成金の種類と特徴
- 65歳超雇用推進助成金
a) 65歳超継続雇用促進コース- 65歳以上への定年引上げや、66歳以上の継続雇用制度の導入等を行う企業に対して支給
- 措置内容に応じて10〜160万円を支給
- 高年齢者の雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した企業に対して支給
- 措置内容に応じて10〜80万円を支給
- 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した企業に対して支給
- 対象者1人につき48万円(中小企業は60万円)を支給
- 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
- 65歳以上の離職者を雇い入れた企業に対して支給
- 対象者1人につき70万円(中小企業は90万円)を支給
- 高年齢労働者処遇改善促進助成金
- 60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善を行う企業に対して支給
- 措置内容に応じて最大25万円(中小企業は32万円)を支給
- エイジフレンドリー補助金
- 高齢者の安全衛生確保のための設備改善等を行う中小企業事業者に対して支給
- 補助率1/2、上限100万円
2. 助成金活用のメリット
- 経済的負担の軽減
- 高齢者雇用に伴う制度整備や環境改善のコストを軽減できる
- 制度導入の促進
- 助成金の活用により、新たな制度や取り組みの導入が容易になる
- 企業イメージの向上
- 高齢者雇用に積極的な企業として、社会的評価が高まる可能性がある
- 人材確保・定着の促進
- 高齢者にとって魅力的な職場環境を整備することで、優秀な人材の確保・定着につながる
- 生産性向上への寄与
- 高齢者の経験や技能を活かすことで、企業全体の生産性向上に寄与する
これらの助成金を効果的に活用することで、高齢者雇用の推進と企業の競争力強化の両立を図ることができます。
65歳超雇用推進助成金
1. 65歳超継続雇用促進コース
このコースは、65歳以上への定年引上げや、66歳以上の継続雇用制度の導入等を行う企業に対して支給されます。
- 支給額:措置内容に応じて10〜160万円
- 主な要件:
- 65歳以上への定年引上げ
- 定年の定めの廃止
- 66歳以上の継続雇用制度の導入
- 支給のタイミング:制度の実施日から2ヶ月以内に申請
2. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
このコースは、高年齢者の雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した企業に対して支給されます。
- 支給額:措置内容に応じて10〜80万円
- 主な要件:
- 高年齢者の雇用管理制度の整備
- 高年齢者の雇用環境整備の措置
- 高年齢者の無期雇用への転換
- 支給のタイミング:計画期間終了後2ヶ月以内に申請
3. 高年齢者無期雇用転換コース
このコースは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した企業に対して支給されます。
- 支給額:対象者1人につき48万円(中小企業は60万円)
- 主な要件:
- 50歳以上の有期契約労働者を無期雇用に転換
- 転換後6ヶ月以上の継続雇用
- 転換後の賃金が転換前と比べて低下していないこと
- 支給のタイミング:無期雇用転換後6ヶ月経過後2ヶ月以内に申請
これらの助成金を活用することで、高齢者雇用の推進に伴う経済的負担を軽減できる可能性があります。具体的な申請方法や詳細な要件については、厚生労働省や各都道府県労働局にお問い合わせください。
特定求職者雇用開発助成金
1. 特定就職困難者コース
このコースは、高年齢者や障害者など就職が特に困難な者を雇い入れた事業主に対して助成するものです。
- 対象労働者:
- 60歳以上の者
- 身体障害者、知的障害者、精神障害者
- その他就職困難者(母子家庭の母等)
- 助成額:
- 大企業:50万円(短時間労働者は30万円)
- 中小企業:60万円(短時間労働者は40万円)
- 助成期間:
- 大企業:1年(短時間労働者は6ヶ月)
- 中小企業:1年(短時間労働者は6ヶ月)
2. 生涯現役コース
このコースは、65歳以上の離職者を雇い入れた事業主に対して助成するものです。
- 対象労働者:
- 65歳以上の離職者
- 助成額:
- 大企業:70万円(短時間労働者は50万円)
- 中小企業:90万円(短時間労働者は60万円)
- 助成期間:
- 1年(短時間労働者は6ヶ月)
両コースとも、以下の点に注意が必要です:
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れることが条件です。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れることが必要です。
- 対象労働者の雇入れ日の前後6ヶ月間に事業主の都合による解雇等がないことが条件です。
- 支給対象期間における対象労働者の労働に対する賃金を支払期日までに支払っていることが必要です。
これらの助成金を活用することで、高齢者の雇用促進と企業の人材確保の両立を図ることができます。申請手続きや詳細な要件については、最寄りのハローワークや労働局にお問い合わせください。
その他の関連助成金
1. 高年齢労働者処遇改善促進助成金
この助成金は、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善を図るため、賃金規程等の改定に取り組む事業主に対して助成するものです。
- 対象:60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善を図る事業主
- 支給額:
- 大企業:最大25万円
- 中小企業:最大32万円
- 主な要件:
- 就業規則等を改定し、60歳以上の高年齢労働者の賃金の引上げを実施すること
- 高年齢労働者の賃金を引き上げた後の賃金額が、引上げ前の賃金額の5%以上増額していること
- 賃金規程等の改定から1年以上経過していること
2. エイジフレンドリー補助金
この補助金は、高齢者の安全・健康確保を図るために必要な設備・装置等の導入等に要する経費を補助するものです。
- 対象:高年齢労働者(60歳以上)の安全・健康確保措置を講じる中小企業事業者
- 補助額:
- 補助率:1/2
- 上限額:100万円
- 対象経費の例:
- 高齢者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入
- 腰痛予防のための機械装置(重量物搬送機器等)
- 安全確保のための機器(安全センサー、安全防護柵等)
- 働く高齢者の健康や体力の状況の把握等
- 体力チェック機器等
- 高齢者の特性を考慮した作業管理
- 作業手順書の作成、職場環境の改善等
- 高齢者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入
これらの助成金・補助金を活用することで、高齢者雇用に伴う経済的負担を軽減しつつ、高齢者が安全に働ける職場環境を整備することができます。申請手続きや詳細な要件については、厚生労働省や各都道府県労働局にお問い合わせください。
助成金申請の手順
1. 申請前の準備
- 助成金の内容を十分に理解する
- 支給要件、対象となる取組、支給額などを確認
- 不明点は労働局やハローワークに問い合わせる
- 社内での実施計画を立てる
- 取組内容、実施時期、担当者などを決定
- 必要な書類や証拠書類の準備を計画
- 就業規則の変更が必要な場合は手続きを行う
- 労働基準監督署への届出を忘れずに
- 労使協定が必要な場合は締結する
- 過半数労働組合または過半数代表者との協定
2. 申請書類の作成
- 申請書類一式を入手する
- 厚生労働省や各都道府県労働局のウェブサイトからダウンロード
- または労働局やハローワークで入手
- 申請書類を作成する
- 記入例を参考に、漏れなく正確に記入
- 添付書類(就業規則、労使協定書のコピーなど)を準備
- 作成した書類のチェック
- 記入漏れ、誤記がないか確認
- 必要な添付書類が揃っているか確認
3. 申請から支給までの流れ
- 申請書類の提出
- 管轄の労働局またはハローワークに提出
- 郵送の場合は配達記録が残る方法で送付
- 書類審査
- 提出された書類の内容を労働局で確認
- 不備がある場合は補正を求められる
- 実地調査(必要に応じて)
- 労働局の担当者が事業所を訪問
- 申請内容の確認や関係書類の閲覧
- 支給・不支給の決定
- 審査結果に基づき決定
- 決定通知書が送付される
- 助成金の支給
- 支給決定の場合、指定口座に振り込まれる
- 関係書類の保管
- 支給決定通知書や申請時の添付書類等を保管
- 一般的に支給決定日の翌日から5年間保管が必要
助成金の申請は、制度の理解から始まり、準備、申請、審査を経て支給に至るまで、慎重かつ正確に進める必要があります。不明な点があれば、早めに労働局やハローワークに相談することをお勧めします。